書面の送り方

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通知書や催告書などの法的意味を持つ書面(以下、単に「書面」といいます)を作成し、相手方に送付する場合、どのような方法で送付すれば良いのでしょうか?本ガイドでは、書面の送付方法を説明します。

送付方法の重要性

書面の効力はいつ発生すると思いますか?書面は一定の内容を相手方に伝えるためのものですので、相手方が書面を読んだときに効力が生じると考える人もいるでしょう。しかし、書面を受け取った相手方が読まずに捨てたら効力が発生しないのでは、書面の送付人は困ってしまいます。そこで、法律上は、書面が相手方に到達した時に効力が生じます

書面を相手方に到達させる方法は様々なものが考えられますが、実務上はほとんどのケースで下記の3つのうち1つ又は複数を選択して送付することになります。

直接交付:送付人が相手方に対して直接手渡す方法

郵送:郵便局のサービスを利用して相手方に送付する方法

電子メール:相手方のメールアドレス宛に電子メールを送信する方法

上記の方法により書面が相手方に到達すれば、書面の効力は生じます。しかし、まだ安心はできません。直接交付したはずなのに後から受け取っていないと言われたらどうしますか(証拠確保の問題)?相手方の自宅に郵送した書面を同居家族が受け取ったため相手方本人は見ていないと言われたらどうしますか(受領者の問題)?書面を郵送した時には既に転居していたので受け取っていないと言われたらどうしますか(送付先の問題)?

いずれの方法によって送付する場合でも、漫然と送付するのではなく、これらの点を意識しながら送付することが重要です。また、送付する書面が送付者と相手方の契約に関連するものである場合は、その契約に送付方法、送付先、書面の使用言語などが指定されている場合があります。例えば、「本契約に関連する通知は日本語と英語を併記した書面を、書留郵便又は内容証明郵便で、○○所在の〇〇宛に送付し、これが到達したときのみ有効とする」のように規定されている場合、これに従って書面送付をする必要があります。

書面の相手方への到達が認められるか否かによって、契約の解除・取消の成否や、相手方に対する請求・催告の有無などの結論が変わることもありますので、その書面がいつ到達したか、そしてそのことを証明できる証拠があるかという点は、法的に極めて重要です。

直接交付

直接交付する場合、送付者自ら証拠確保の手段を講じる必要があり、書面を2部準備して1通を相手方に手渡し、もう1通に受領日を記入して受領者の署名・押印を取得し、控えとして保管しておく等の方法が有効である

直接交付とは、送付人が相手方の自宅や職場等を訪問して書面を手渡す場合や、会社に出勤している従業員に対して会社が書面を手渡す場合(又はその逆)等のことをいいます。送付者が相手方と面識があり定期的に会っている場合や、近所にいることが分かっている場合などに、しばしば使われる方法です。送付者が自ら書面を交付するため、郵便局のような第三者に記録が残りません。よって、送付者が自分で証拠確保の手段を講じる必要があります。

書面が到達した事実を証拠化するためには、書面を2部準備して1部を相手方に手渡し、もう1部に交付日を記入した上で受領者の署名・押印を取得して控えとして保管しておく、という方法が有効です。手渡す場面を写真やビデオで撮影することも有効です。相手方が受領を拒否することが予想される場合は、信頼できる第三者を同行させて証人になってもらうことも有効です。相手方が不在である場合は、書面を相手方のポストに投函し、その場面を写真やビデオで撮影することが有効です。相手方が受領拒絶した場合や、不在であった場合は、念のため後から郵送でも送付しておくとより安全です。

交付場所については、相手方本人に手渡す場合は手渡す場所はどこでも構いません。公園やカフェ等で会って書面を手渡すこともできます。他方、相手方の自宅や職場で交付しようとする場合、相手方本人に会って直接渡せれば良いですが、本人には会えずに同居者や職場の受付係などに交付する場合もあるでしょう。このような場合でも、受け取った後に本人に手渡してくれることが想定できる相当な者に交付をすれば到達したと認められます。しかし、たまたま居合わせた客人などに交付したのでは、相手方に到達したとは認められないことが通常です。よって、相手方本人ではない者に手渡す場合は、その受領者が相手方本人とどのような関係にあるのかを確認すべきです。

郵送

郵送する場合、証拠確保のためには配達証明付き内容証明郵便が最も確実である

郵便を出すときは、書面を郵便ポストに投函するのがもっとも簡単です。郵便ポストに投函した書面は、ほぼ確実に宛先に届きます。しかし、重要な書面をポストに投函した後、相手方からそんな書面は受け取っていないと言い張られたらどうしますか?そのような場合に備えて、重要な書面を送付する際はその書面が相手方に到達したことを証明できる証拠の確保が必要になります。そのために使用される郵便が配達証明付き内容証明郵便です。

配達証明付き」というのは、書面を配達する郵便局員が何月何日に書面を配達したかを証明する制度です。郵便局員が書面の宛先住所を訪問し、そこにいる人に書面を手渡して、受領者から受領確認の署名・押印をもらいます。そして、何月何日に配達した旨を記載した報告書を作成し、これを送付者に提供します。送付者は、この報告書をもって、その書面が何月何日に配達されたかを証明でき、これは裁判における証拠としても使用できます。

内容証明郵便」というのは、送った書面に何が書かれていたかを証明する制度です。送付者は発送する書面を3部作成し、1部は宛先へ配達され、1部は郵便局に保管され、1部は送付者が控えとして保管します。この内容証明郵便を、上記の配達証明付きで発送することにより、「いつ、どこに、どのような内容の書面が配達されたか」を証明することができます。

配達証明付き内容証明郵便が、証拠確保という意味では最も確実な方法です。しかし、欠点もあります。それは、受領者が不在であった場合や受領拒否をした場合、配達を完了できないという点です。受領者が受取拒否をした場合は、書面は差出人に返送されます。受領者が不在であった場合は、受領者のポストに不在票を残して、書面は最寄りの郵便局に7日間保管されます。不在票を見た受領者が7日以内に郵便局に連絡をしてその書面を受領すれば、その書面は受領者に配達されます。他方、7日以内に受取がなかった場合は、その書面は差出人に返送されます。

不在により返送された場合は、書面は相手方に到達しなかったことになります。相手方が受取拒否した場合、受取拒否された旨の報告書が作成されますので、これをもって相手方に到達した証拠とすることができるのが原則ですが、状況によっては到達したと認められない可能性もあります。

不在や受領拒否の問題に対応するために利用できるのが特定記録郵便です。これは、郵便局員が郵便物を受領者のポストに投函し、その投函日を記録する制度です。送付者は、書面の発送時に発送の証拠となる控えを受け取り、その後はオンラインで配達完了の記録を確認することができます。受領者から受領の署名・押印を取得するわけではなく書面を受領者のポストに投函するだけなので、受領者が不在でも届きますし、受領拒否をされる恐れもありません。そのため、配達証明付き内容証明郵便が返送された場合は特定記録郵便で再送することが有効です。あらかじめ不在や受領拒絶が予想される場合は、最初から配達証明付き内容証明郵便と特定記録郵便の両方を併用して送付することも有効です。

郵送の場合、送付先住所をどこにするかも非常に重要です。通常、送付先は相手方の住所又は職場のいずれかとなりますが、相手方の住所だと思った住所が実は相手方の親族の住所で本人は居住していなかった場合や、相手方が既に転居や退職していた場合は、送付先の住所に到達しても相手方に到達したことにはなりません。相手方が現在住んでいる住所が確実に分かっていればよいですが、そうでない場合は弁護士に依頼して住民票を確認する等の調査が必要な場合もあります。他方、相手方が法人である場合は誰でも法人の登記事項証明書を取得できますので、そこに記載されている本店所在地又は代表者住所宛てに書面を送付することができます。

契約書等により送付先住所が指定されている場合は、その住所に送付する必要があり、それ以外の住所宛に送付した場合は書面到達の効力が認められない恐れがありますので注意が必要です。

電子メール

電子メールが相手方のメールサーバーに到達すれば書面は到達したと認められるが、エラーメッセージが表示された場合はもちろん、相手方から反応がない場合は、念のため到達確認を行うべきである

書面の内容を電子メール本文に貼り付けるか、又は書面をPDFファイルにしてメール添付し、相手方のメールアドレス宛に送信することによって、直接交付や郵送の場合と同じように書面は相手方に到達させることができます。電子メールで送信すれば自動的に送信記録が残るため、証拠確保も容易です。ただし、メールが技術的な問題によって相手方のメールサーバーに到達しなかった場合は、書面が到達したとは認められません。よって、エラーメッセージが表示された場合はもちろん、送信した後も相手方から全く反応がなくメールを読んだ形跡がない場合は、メールの到達確認を行うべきです。到達確認の方法としては、送信済みのメールを再送する、又は同内容の書面を郵送で送付する、等の方法が考えられます。到達確認の連絡をする際は、最初にメールを送信した日時を示し、書面到達の効力はあくまで最初にメールを送信した時に発生しているということを明確にする必要があります。また、メールソフトの配信確認機能を利用することも有効です。

送付先とするメールアドレスを正確に入力しなければならないことは当然です。アルファベットの文字が1文字多い・少ないとか、「.」「-」「_」等の記号を間違えるといった打ち間違いは意外と多いですので、メールアドレスを打ち込んだ場合は必ずダブルチェックしてください。相手方のメールアドレスが複数ある場合、既に使用していないアドレスが混じっている場合がありますので、差し支えない限り全てのアドレスを宛先に入れて送信すると良いでしょう。

書面を電子メールで送信する場合、書面は電子データで送信されます。電子データの改ざんを防止する制度として電子署名があり、添付するPDFファイルに電子署名を付すこともできます。しかし、メールの送信履歴があれば送信者を特定できますので、電子メールで送信する通知書や催告書には必ずしも電子署名を付す必要はありません

最後の手段である公示送達

契約の解除・取消などの意思表示をしたいが、調査をしても相手方の住所や職場が不明である場合は、公示送達による意思表示をすることができます。簡易裁判所に公示送達の申立をすると。意思表示の内容が裁判所の掲示場に掲示され、その旨が官報に掲載され、一定期間が経過すると、その意思表示が相手方に到達したものとみなされます。公示送達された意思表示の内容は、実際には相手方の目に触れないことが通常であるにも関わらず、これが相手方に到達したとみなす制度ですので、最後の手段といえます。そのため、相手方の所在が不明である旨の調査をしっかりした後でなければ、公示送達の申立は認められません。

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