公正証書の役割と意義

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契約書を作成した後、その契約書を公証役場に持っていって公正証書にしてもらうことがあります。本ガイドでは、公正証書とは何か、なぜ公正証書を作る必要があるのか、公正証書を作るためにはどうすればよいのか、について説明します。

書面を公正証書にすることで当事者の真意に基づく書面であることが確実となり、より強い法的効力を持つ書面となります。また、公証人という公正な第三者が契約書作成に関わることで、契約の有効性を巡る争いを予防することが期待できます。

「公正証書」とは何か?

公正証書とは、公証人がその権限に基づき作成する公文書のことである。

公正証書を作成する際は、当事者が作成した文書内容を公証人が公正証書の形に整えます。公証人が当事者の本人確認と意思確認を行い、問題がなければ当事者が公証人の面前でその書面に署名・押印をします。当事者の署名・押印を目撃した公証人が、その書面に認証を付すことで、公正証書は完成します。

公証人とは、公証人法に基づき法務大臣に任命された公務員であり、通常は裁判官や検察官を長く務めた法律実務経験豊かな者が任命されます。そのような公証人が、公正中立な立場で当事者の本人確認と意思確認を行い作成された書面であるため、公正証書は確かに当事者本人の意思に基づき作成された書面であると推定されます(成立の真正の推定)。その結果、当事者が後からあの書面は偽造されたものである等と争うことが困難になります。このような真正推定が、公正証書を作成する理由です。

公正証書はどこで作るのか?

公正証書を作るためには、公証役場に連絡をしてそこに所属する公証人に作成を依頼する。

公証役場は全国に約300箇所あり、全ての都道府県に設置されています。各公証役場の場所は日本公証人連合会のウェブサイトに記載されています。どこの公証役場で作成しても公正証書の効力は同じですので、通常は最寄りの公証役場を使います。

当事者が病気等で公証役場へ行くことが困難な場合などは、追加費用を支払って公証人に出張してもらうこともできます。この場合は、出張地を管轄する公証役場に出張を依頼することになります。

公正証書を作るのはどのような場合か?

ある書面を公正証書にするかどうかは当事者の任意であり、成立の真正の推定や執行力を得るために当事者が希望する場合に、当事者の判断で公正証書にすればよい。ただし、一部の書面については公正証書の作成が法律上要求されている。

契約書等の書面は、当事者が署名・押印をすれば有効な書面になります(これを公正証書と対比して「私署証書」と呼びます)ので、必ずしも書面を公正証書にする必要はありません。当事者が公正証書にすることを希望する場合に、当事者の判断で公正証書を作成すれば良いのです。ただし、一部の書面については公正証書の作成が法律上要求されていますので、それに該当する書面を作成する場合は当事者は必ず公正証書を作成しなければなりません。

法律上公正証書とすることが要求されている書面としては、任意後見契約、事業用定期借地権設定契約、公正証書遺言、保証意思宣明公正証書があります。この他にも、法律上公正証書とすることが要求されているわけではないが、当事者が任意に公正証書とすることが多い書面の例として、金銭消費貸借契約、不動産売買契約、離婚協議書、遺産分割協議書などがあります。

公正証書を作成する際の具体的な手順

公正証書を作成する際の一般的な手順は次のとおりです。

1 公正証書の文案を作成する

遺言のように当事者が1人で作成できる文書であれば、本人が希望する内容を文書化すれば足ります。他方、契約書の場合は、全ての当事者が合意した内容を文書化する必要があります。当事者が集まって一緒に文案を作成することも可能ですが、実際にはこのような方法はあまり行われていません。多くの場合、1人の当事者が元となる契約書案を作成して他の当事者と共有し、これに修正を加えて全員が合意できる内容にする、という方法で作成します。

2 公証人と事前準備

日本公証人連合会のウェブサイト等から最寄りの公証役場を探し、電話連絡をします。公正証書を作成したい旨を伝え、担当公証人と事前準備を開始します。事前準備は、電子メールでやりとりをしたり、場合によっては事前相談のために公証役場を訪問することもあります。当事者から公証人に対して作成したい文書の概要を伝え、作成したい文書のドラフト及び関連書類を公証人に送付・交付します。公証人は、文書の形式面・内容面に手を加えて、公正証書案を完成させます。全ての当事者が公正証書案に合意した後に、公正証書作成日を決めて公証人に予約を取ります。

3 作成当日

予約した日時に全ての当事者が公証役場に集合します。その際、当事者は身分証明書・印鑑証明書や実印等、公証人から指示されたものを持参する必要があります。公証人は、全当事者の身分証明書を確認し、本人であることを確認した後、公正証書の内容を説明し、全ての当事者が合意していることを確認します。その後、全ての当事者が公証人の面前で署名・押印し、公証人が認証を付して公正証書が完成します。公正証書の原本は、原則として20年間、公正証書遺言の場合はそれ以上の期間、公証役場に保管されます。当事者には、原本の正式な写し(正本と呼ばれます)が交付され、これが原本と同じ効力を持ちます。

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